総括

ヒトでのオタネニンジンによる体脂肪改善(脂質燃焼)効果の検証実験では、統計学的に有意とはいえないまでも、オタネニンジン摂取により安静時脂質燃焼が5-10%促進することが示唆された。今後はより厳密な科学的根拠を蓄積すべく、被験者数を増やして同様に研究を実施する予定である。

協力小学校における児童の身体指標および日常活動量の測定から、発育成長段階にある10歳令の児童においては身体指標の持つ意味が成人とは違うことを念頭に置いて結果を解析する必要があることが実感された。測定に協力した児童の半数以上が年齢ごとの目標歩数、中等度活動量を満たしており、10日間という短い測定期間であるが、1日当たりの活動量は一定レベル以上の集団であると考えられた。バスや徒歩などの通学方法と日常活動量、体脂肪率との間に明確な相関は認められなかった。

身体指標および日常活動量の測定と同時期に実施した食習慣・生活行動調査結果を総合すると、対象児童は一定レベルの正しい食習慣、食生活の知識を有しているものの、その知識が正しい食習慣・食生活行動には結びついていない実態が明らかになった。同様に日常活動量についても対象児童自身が意識している活動強度・時間と実際の活動のそれとの間に乖離が観察された。これらの点は、本事業が目的とする児童の正しい食行動・食生活行動へと向かうために必要な意識を向上させる目的に合致した児童集団であることを示している。今年度事業により、児童の意識変容を促すための食行動、生活活動の項目として、食事バランスではなく、個別の栄養素項目(脂質、糖質、ミネラル)および食事摂取項目(副菜、果物、お菓子類)が明確となった。次年度以降の事業においては、これらの項目を重点的に活用して、児童の意識を行動へと結びつけるための意識変容の具体的な取り組みを行っていく予定である。

オタネニンジンは独特の苦みや香りを持ち、生のまま食すことは困難である。本年度事業では、材料費や調理作業の効率、調味の均一等を考慮したうえで、加工されたオタネニンジン粉末を使用した。加熱殺菌されている乾物としてのオタネニンジン粉末には調理中の加熱殺菌の義務がないため、塩や砂糖のような調味料と同様にそのまま使用することができることは大きなメリットである。

粉末として調理に加える方法としては、揚げ、焼き、炒め、蒸し、煮る、の加熱調理はもちろん、和え、漬けなど非加熱調理法も可能であり、多岐にわたる調理展開が可能であることが分かった。独特の風味を持つメニューとして、給食の中でも児童に人気の高いカレーや麻婆豆腐、肉じゃが、ごま和えなどを採り挙げた。これらはオタネニンジン粉末とも味や風味の点から相性が良く、料理の特徴的な味付けが強いことと併せて、オタネニンジンの独特な風味をマスキングすることができた。敢えて新しいメニューを開発するのではなく、児童にとって身近で食べ慣れた人気メニューに加えることで、初めて食べる食材として苦手意識を生まないように意図して献立例を作成することができた。次年度はこれらの献立例を参考にしつつ、協力小学校と連携して児童への給食提供を実施する予定である。