【目的】本実験では,オタネニンジン摂取時における安静時の脳,骨格筋を含めた全身代謝変化、特に脂質代謝(燃焼)に及ぼす影響について検討した。
【方法】
1. 呼気ガス分析装置によるオタネニンジンの脂質燃焼促進効果の実証
被験者: 女性6 名(平均年齢20歳)
測定条件: 室温22-24°C、湿度11-40%の室内環境で実験を行った。室内入室後に安静(座位覚醒)状態を維持した。安静開始10分後に,規定食(市販乾燥スープ:エネルギー16 kcal、たんぱく質0.8 g、脂質0.8 g、炭水化物1.7 g、食塩相当量1.4 g)にオタネニンジン0.8 gを含んだもの、あるいは含まないものを一人の被験者が最低一週間の間隔をあけてそれぞれ摂取した。試験食摂取15分後、ポータブルガスモニター(AR-10、アルコシステム)を用いて10分間安静時におけるエネルギー代謝測定を行った。呼気ガス分析は,呼吸商(RQ)、酸素消費量(VO2)、二酸化炭素排出量(VCO2)を測定した。
2. 加速度計装置による日常活動量の基礎データ収集
被験者: 女性8 名(平均年齢20歳)
測定条件: KenzライフコーダGS4秒版(SUZUKEN)(幅7.2 cm、高さ4.2 cm、厚さ2.9 cm、重さ45 g、装着するためのフック付き)を腰部に装着して、金曜日から翌週日曜日までの10日間(朝覚醒後から夜入浴まで)普段通りに活動してもらい、その活動量を測定した。日常活動量の分析はLifelyzer05 Coachソフトウェア(SUZUKEN)を用いて中等度運動時間、歩数について行った。
【結果および考察】
1. オタネニンジンの体内脂質代謝(燃焼)に及ぼす影響
オタネニンジンを0.8 g含む規定食あるいは規定食のみを摂取後5-10分経過時間において、呼気ガス分析装置にて被験者6名の呼吸商(RQ)、酸素消費量(VO2)、二酸化炭素排出量(VCO2)の変動を経時的に測定した。VO2およびVCO2の数値は、オタネニンジンの摂取の有無にかかわらず測定時間内で比較的大きな変動を示した。これは酸素消費量と二酸化炭素排出量が相関して変動していることによるものと考えられた。
一方、RQについては摂取の有無にかかわらず概ね一定の数値を摂ることが観察された。オタネニンジンの摂取の有無によるRQ値については、被験者6名のうち、3名がオタネニンジン摂取により測定時間内すべてについて下回っていた。残りの3名については同程度かあるいは一部の時間について上回ることが観察された。安静時代謝における測定時間内のRQ平均値の相対的変動率(オタネニンジン非摂取時RQ値を100%としたときの摂取時RQの相対値)を表1にまとめた。被験者6名の相対的変動率の平均値は、96.4%、最大値が103.4%、最小値が87.6%であった。平均値の標準偏差が7.3%であることから、オタネニンジン摂取により統計学的に有意にRQ値が低下するとは言えないものの、最大値、最小値を考慮すると低下する傾向があることが示唆された。
体内で脂質が燃焼した場合のRQ理論値は0.7であり、一方、糖質が燃焼した場合は1.0となり、RQ値はその間を変動する。今回、オタネニンジン摂取により被験者のRQ値は低下する傾向がみられたことから、オタネニンジン摂取により安静時における脂肪燃焼が促進される可能性が示された。今後は被験者数を増やして更なる検証を進めることにより、オタネニンジンのヒトでの体内脂肪燃焼促進効果が実証されることが期待される。
2. 加速度計装置による日常活動量の基礎データ収集
被験者8名の10日間(平日6日間、休日4日間)の日常活動量および体指標結果を表2に示した。BMIと日常活動量との間に明確な相関は認められないが、活動時間よりも歩数のほうがよりBMIとの相関が示唆された。