学童の身体指標測定から得られたデータに基づく生活習慣の考察

【目的】本研究介入前時点における協力小学校の児童の身体指標測定、および食・生活習慣調査を実施することにより、対象児童の身体状況および日常生活習慣の現状を把握すること、ならびに学童自身による身体指標(体脂肪、日常活動量)測定体験活動を通した健康意識を醸成することを目的とした。
【方法】

2-1. 体組成測定装置を使った身体指標測定
被験者: 児童9 名(平均年齢10歳)
測定条件: ポータブル体成分分析装置(Inbody470、株式会社インボディ・ジャパン)を使って児童と一緒に操作を行い、測定した(図1上図)。体組成測定で得られる身体指標データである体重(BMI)、筋肉量、体脂肪量等は、Lookin’Bodyソフトウェアを用いて解析した。測定結果について協力児童・保護者にフィードバックした。

 

2-2. 加速度計装置による日常活動量の基礎データ収集
被験者: 児童9 名(平均年齢10歳)
測定条件: KenzライフコーダGS4秒版(SUZUKEN)(幅7.2 cm、高さ4.2 cm、厚さ2.9 cm、重さ45 g、装着するためのフック付き)を腰部に装着して、金曜日から翌週日曜日までの10日間(朝覚醒後から夜入浴まで)普段通りに活動してもらい、その活動量を測定した(図1下図)。日常活動量の分析はLifelyzer05 Coachソフトウェア(SUZUKEN)を用いて中等度運動時間、歩数について行った。

2-3. 食行動・生活習慣調査
被験者: 児童10 名(平均年齢10歳)
調査方法: A4用紙5枚分相当の食行動・習慣アンケート調査(BDHQ15y, 2009school)を実施した(図2)。併せて日常生活および健康意識・伝統食材知識に関するA4用紙1枚分相当のアンケート調査を行った。これらのアンケートは、各家庭で協力児童とその保護者が一緒に相談しながら記入・提出してもらった。アンケートに基づく食行動・習慣に関する診断結果票を協力児童・保護者にフィードバックした。

【結果および考察】

2-1. 体組成測定装置を使った身体指標測定
協力小学校の児童9名の身体指標(BMI、体脂肪率(%)、筋肉量)測定結果を表3に示した。発育成長過程にある小学校4年生児童が対象であることから、BMIの数値は成人の意味するものとは異なることが予想される。成長過程にある9名のBMIと体脂肪率、BMIと筋肉量、および体脂肪率と筋肉量にはそれぞれ正の相関傾向が認められた。また、それぞれの身体指標には大きな個人差があることがわかる。

2-2. 加速度計装置による日常活動量の基礎データ収集
協力小学校の児童9名の日常生活における1日の平均活動量(歩数、全活動時間、中等度活動時間)測定結果を表3に示した。9名の児童のうち7名は1日当たりの目標とされる歩数である9000歩におよそ達していた。肥満と関連して体内脂肪の燃焼に最も関わるとされる中等度の運動時間については、目安となる30分間を超えた児童が6名であった。一番少ない児童で22分間であった。身体指標との関連では、BMI、体脂肪率、筋肉量と歩数や中等度運動時間との相関ははっきりしなかった。発育課程にある児童では、これらの身体指標に及ぼす活動量の影響ははっきりと認められないことが原因と考えられる。

2-3. 食行動・生活習慣調査
協力小学校の児童9名の食行動・習慣アンケート調査および日常生活、健康意識・伝統食材知識アンケート調査に関する結果を表3に示した。10名の児童についての食行動・習慣アンケート調査では、タンパク質:脂質:糖質の摂取比率は、おおむね基準とされる1日当たりの摂取比率内の数値であった。個々の栄養素についてみると、食塩は1名を除き摂取過剰であった。また、半数の児童が脂肪の摂取量が超過であった。現在の日本ではカルシウムと鉄の摂取量がほぼすべての年代で不足傾向と言われているが、本調査においても半数の児童がカルシウムの摂取の不足傾向にあり、鉄については全員が不足傾向にあった。食事のバランスについてみてみると、主菜を摂り過ぎること、副菜の摂取が足りないこと、果物をほとんどとらないこと、お菓子などの甘い物を相当慮摂取していることなど、食事のバランスについては改善が急務であることが分かった。これらの点については保護者に結果と改善点をまとめたシートをフィードバックした。
日常生活、健康意識・伝統食材知識アンケート調査の結果と活動量測定結果から、児童が意識している活動時間は実際の活動時間とは下振れするケースと上ぶれするケースが半数あり、児童自身が意識している活動時間の長さと実際の中等度活動時間には一定の乖離が認められる。甘い物の摂取過剰は体脂肪を増やすこと、運動することで脂肪を減らすことができること、脂肪を減らすのに役立つ正しい食べ方をほとんどの児童が知識として有していた。しかし、すべての児童が日常的にお菓子などの甘い物や脂肪を過剰に摂取しており、知識が行動に結びついていないことが伺えた。これらの知識は他の人やテレビなどのメディアを通して得た受動的なものであり、主体的に自分から学習して得たものではないことがわかる。