総括・謝辞

2018年度から継続して協力小学校における児童の身体指標および日常活動量の測定を実施してきた。その結果から、身長、体重などの体位の向上が標準的な範囲に収束してきている傾向がみられた。2018年度の調査開始時より、対象児童の日常活動量は、全体として低下する傾向であったが、2020年度にはさらに大幅な低下となった。昨年度までの全体としての活動量の低下傾向は、高い活動量を維持している児童と低い児童との2極分化が進行していることによるものと考えられたが、今年度は2極分化に加えて、全体で活動量が大幅に低下していた。2020年4月の全国を対象とした緊急事態宣言から始まった新型コロナウイルスの流行阻止のための対策により、児童の日常における活動が大きく制限されたことが主因であることは疑いようがない。実際に日常生活に関するアンケート結果からもこのことが示されている。現在の感染症対策に基づく生活様式下において、通学以外の日常生活上での児童の身体活動習慣が失われてしまうことが危惧される。

身体指標および日常活動量の測定と同時期に実施した食習慣・生活行動調査結果から、食習慣、食生活についての正しい知識を有する児童の割合は前年度よりも増加しており、本研究による取り組みの成果が表れてきているものと評価している。一方で、前年度と同様に、個別の食事バランス、栄養素項目(ミネラル)および食事摂取項目(主食、副菜、果物、お菓子類)などについての正しい知識が、正しい食習慣・食生活行動に依然として結びついていない実態が明らかになった。この点は、本研究が目的とする児童の正しい食行動・食生活行動へと向かうために必要な意識を向上させるために、一層の実践的介入が必要なことを示している。今年度取り組んだフードモデルシステムを活用した自発的な活動に基づく食事に関する実践的な活動は、児童を正しく行動変容させる有効なツールとなりうることが示唆された。これまで適正に摂取されてきた一部の栄養素について、今年度新たに摂取不足の児童が約半数にも上ることが認められた。新型コロナウイルス流行に伴う様々なストレスが影響を及ぼして、結果として児童の食生活に変化が生じているのかもしれない。

オタネニンジンは独特の苦みや香りを持ち、生のまま食すことは困難である。本研究では、オタネニンジン粉末に加えて、比較的調理しやすいひげ根部分を利用して実践的な給食メニューの作成に取り組んだ。メニューとして、クリームシチュー、たれつきから揚げ、そして新たにデザートの視点を加えて、さつま芋の蒸しパンを作成した。これらはオタネニンジン粉末やひげ根とも味や風味の点から相性が良く、料理の特徴的な味付けによりオタネニンジンの独特な風味を緩和することができた。児童にとって身近で食べ慣れているもので、給食という大量調理現場に即したメニュー献立例を作成することができた。

福島県学術教育振興財団からの研究助成金を得て、協力小学校の全面的な協力の下、児童に対する機能性伝統食材を活用した体脂肪改善のための体験活動、及びその活動を通して将来、健康増進に自発的に取り組むことができる人材を育成することを目的として本調査研究を2018年度から3年間にわたり実施してきた。調査研究期間全体を通して、会津地域の伝統食材に関する知識を、体験を通して児童に伝えることができたと考えている。また、体脂肪改善をはじめとする、ヒトの健康を維持するために必要な食・生活行動についての知識を児童が習得する機会をつくることにより、児童の食・健康増進についての意識を調査開始時に比べて高めることができたと考えている。一方、今回の取組では、児童が得た知識を、自身の食・生活行動を正しい方向へと自発的に変容させることには十分に至らなかった。2020年度に実施したようなフードモデルなどを活用したより実践的な取り組みが有効なアプローチになるものと考えられる。

本研究期間全体を通して、協力小学校の教職員・事務職員の皆様、ならびに対象児童の保護者の皆様のご理解とご協力に深く感謝申し上げます。また、本研究を実施するために必要な予算のご支援をいただきました福島県学術教育振興財団に感謝いたします。