学童の身体指標測定から得られたデータに基づく生活習慣の考察3

【目的】
2018年度から継続して協力小学校の児童の身体指標測定、および食・生活習慣調査を実施することにより、対象児童の身体状況および日常生活習慣の現状と前年度からの変化を把握すること、ならびに学童自身による身体指標(体脂肪、日常活動量)測定体験活動を通した健康意識の変化を検証することを目的とした。

【方法】
2-1. 体組成測定装置を使った身体指標測定
被験者: 児童9 名(平均年齢12歳)
測定条件: 2018~2019年度と同様に、ポータブル体成分分析装置(Inbody470、株式会社インボディ・ジャパン)を使って児童と一緒に操作を行い、測定した。体組成測定で得られる身体指標データである体重(BMI)、筋肉量、体脂肪量等は、Lookin’Bodyソフトウェアを用いて解析した。測定結果について協力児童・保護者にフィードバックするとともに、協力小学校と平均値や変化率などの全体数値データを共有した。

2-2. 加速度計装置による日常活動量データ収集
被験者: 児童9 名(平均年齢12歳)
測定条件: 2018~2019年度と同様に、KenzライフコーダGS4秒版(SUZUKEN)(幅7.2 cm、高さ4.2 cm、厚さ2.9 cm、重さ45 g、装着するためのフック付き)を腰部に装着して、10日間(朝覚醒後から夜入浴まで)普段通りに活動してもらい、その活動量を測定した。日常活動量の分析はLifelyzer05 Coachソフトウェア(SUZUKEN)を用いて中等度運動時間、歩数について行った。

2-3. 食行動・生活習慣調査
被験者: 児童9 名(平均年齢12歳)
調査方法: 2018~2019年度と同様に、A4用紙5枚分相当の食行動・習慣アンケート調査(BDHQ15y, 2009school)を実施した。併せて日常生活および健康意識・伝統食材知識に関するA4用紙1枚分相当のアンケート調査を行った。これらのアンケートは、各家庭で協力児童とその保護者が一緒に相談しながら記入・提出してもらった。アンケートに基づく食行動・習慣に関する診断結果票を協力児童・保護者にフィードバックするとともに、協力小学校と平均値や変化率などの全体数値データを共有した。

【結果および考察】
2-1. 児童の身体指標
児童9名の身体指標(BMI、体脂肪率(%)、筋肉量の測定結果に基づき、2018年度からの3年間の変化量として図2に示した。発育成長過程にある小学校6年生児童が対象であることから、BMIは成人の意味するものとは異なることが予想される。成長過程にある9名の身長、体重ともに増加している。過去2年間と同様にそれぞれの身体指標には依然として大きな個人差がある。現時点で肥満に当てはまる児童は認められない。

全体として筋肉量は成長に従って増加傾向が見られるが、体重・体脂肪率の増加に比べて筋肉量の増加が昨年からわずかしか見られない児童、および体脂肪率が大幅に上昇している一方で筋肉量が低下している児童がそれぞれ1名ずつ認められた。日常の活動量の低下(後述)と相関していると考えられる。筋肉量が増えると基礎代謝がそれに伴い上昇することから肥満になりにくい体質になることから、体重だけでなく、筋肉量と体脂肪率の増加を併せて注意深く見続けていく必要がある。

一方、体脂肪率は過去2年間では、全体平均値はおおむね一定のレベルで推移してきたが、2019年度には大きく上昇した(赤矢印)。成長期における体位の向上による正常な変化に加えて、新型コロナウイルス感染流行に伴う日常活動量の低下、食生活習慣の変化などを原因とする正常から逸脱した体脂肪の増加が起きている可能性が考えられる。対象児童は中学校に進学してしまうことから、身体測定データの継続的な取得・比較解析が困難になると予想され、児童の身体変化、特に体脂肪率と筋肉量について、個人レベルで観察を継続するよう注意喚起する必要があると考える。

2-2. 児童の日常活動量
児童9名の日常生活における1日の平均活動量(歩数、全活動時間、中等度活動時間)の測定結果に基づき、2018年度からの3年間の変化量として図2に示した。1日の平均活動量は、歩数、全活動時間、中等度活動時間のいずれにおいても、過去2年間に比べて2020年度では、全体平均、最大値、最小値のすべてにおいて大幅に低下していることが分かった(赤矢印)。すべての活動量について、これまで同様に児童間で2極分化が生じており、2020年度ではその差が一層顕著になっている。新型コロナウイルス感染流行に伴う日常活動の制限が原因であることは疑いようがない。今後も日常活動の制限が続くことが予想されることから、肥満と関連して体内脂肪の燃焼に最も関わるとされる中等度の運動時間を中心にどのように確保するための具体的な施策が必要である。

2-3. 食行動・生活習慣
児童9名の食行動・習慣アンケート調査および日常生活、健康意識・伝統食材知識アンケート調査結果に基づき、2018年度からの3年間の変化の推移を図3~7に示した。栄養素の摂取については、不足に気を付けなければならない栄養素であるカルシウムが、2年前の調査開始時に比べてその摂取量が適正化してきている(図3、青星印)。成長期の児童にとって骨の生育に必須の栄養素であることから、正常な体位向上につながることが期待される。一方、同様に不足に気を付けなければならない栄養素である鉄の摂取に関しては調査開始時からの不足傾向が改善されていない(図3)。過剰摂取に気を付けなければいけない栄養素である食塩は、調査開始から今年度まで摂り過ぎの状態が継続している(図4。塩の過剰摂取は血圧を確実に上昇させる因子であり、現時点では大きな問題にはならないが、塩味の嗜好が定着することで将来、健康上の問題が発生することが懸念される。今年度もこれらの点について、保護者に結果と改善点をフィードバックした。

1日当たりの栄養素の摂取量についての結果を図5に示す。たんぱく質が適正な摂取量である一方、約半数の児童が脂肪を過剰摂取している。これまで脂肪の摂取量が適正化する傾向が認められていたが、今年度は適正化に向けての変化が十分ではなかった。また、今年度初めて、炭水化物の摂取不足の児童が約半数認められた。新型コロナウイルス流行に伴う様々なストレスが影響を及ぼして、結果として児童の食生活に変化が生じている可能性がある。成長期における炭水化物の摂取は、他の栄養素の本来のはたらきを維持するための基盤となるエネルギー源であることから、健康的な成長を維持する上で、炭水化物の適正摂取を改めて周知していく必要がある。

1日の食事バランスの変化を図6-1 図6-2に示す。9名の児童の食事のバランスについてみてみると、2019年度では主菜の摂取量に改善傾向がみられたが、主食、主菜、副菜ともに適量摂取の児童の割合は、それぞれの調査時に変動はあるものの半数以下にとどまっており、個々の栄養素の摂取に比べて食事バランスが適正でない状況が3年間を通して認められた。今年度は特に主菜の過剰摂取の傾向と、副菜の過摂取不足の傾向が顕著である。また、牛乳・乳製品およびお菓子などの甘いものの摂取量も過剰な状況が続いている。一方で、果物の摂取はほとんどない状況である。福島県が果物の全国有数の生産地であることを併せて考えると、これからの福島県の産業を担う児童たちが果物を日常的に摂取しない生活習慣が定着することは、今後の福島県における果物生産の維持に大きな懸念を抱かざるを得ない。果物は食物繊維をはじめとする体にとって有益な機能性成分を多く含む大変優れた食材である。これを児童の食生活に定着させることが、児童の健康にとっても福島県の基幹産業の一つである果樹生産にとっても必要であると考える。具体的な施策が必要であろう。

日常生活アンケート調査結果を図7-1 図7-2 図7-3に示す。甘い物の摂取過剰は体脂肪を増やすこと、運動することで脂肪を減らすことができること、脂肪を減らすのに役立つ正しい食べ方に関する知識がこの3年間を通して正しく定着してきたといえる。一方、活動量測定結果から、児童の活動時間が2020年度特に顕著に短縮してきているという傾向が明確に示された。これは主に新型コロナウイルス感染症流行に伴う様々な外貌における活動の自粛がその傾向を加速させたことと推察される。従来と同様、あるいはそれ以上にすべての児童が日常的にお菓子などの甘い物や脂肪を過剰に摂取しており、依然として正しい知識が正しい行動に結びつかない状況が生じているといえる。本研究を通じて会津伝統野菜であるオタネニンジンを使った給食を提供することで、身近に伝統野菜を知る機会を作ってきた。今年度、調査対象のすべての児童が会津伝統野菜のことを知り、さらには半数以上が実際に食する経験を持ったことが分かった。

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